作品にもよるけれど。

 私は大学の時に泉鏡花を専攻していた。専攻とは名ばかりのもので、ただ全集を読んだり、卒論の資料を集めたりだけど、短大の時から鏡花一色でした。その他に好きだったのは、中島敦谷崎潤一郎三島由紀夫も好きだった今は安部公房も好きだし「純文学」というものが好きだ。純文学とは何か、というテーマで短大のときに教授と話し合ったことがあったけど、現代における純文学の位置付けが難しい。つまらない=純文学ではないと思う。ただ最初は大衆文学だったもの、例えば江戸川乱歩なんかは今ではちゃんとした文学研究もなされて「純文学」ではなくても「文学」として認められていると思う。

 さて、私が好きでもなぜか恥かしくていえない作家に林真理子がいる。何故恥かしいかと言うと、「不機嫌な果実」以降、多少「えろいのを書く人」とか、アンアンに連載しているコラムの執筆者、くらいに認識されてないかなあと思ったり、それ以前に「誰?」といわれてしまいそうだから。実は最初に中学生?の時に「葡萄が目に染みる」を読んでから色々と読ませてもらっている。私が林真理子の作品で好きなのは、「ミカドの淑女」や「天鵞絨物語」そして今回読んだ「本を読む女」など明治大正あたりを舞台にしたしいたげられた女の物語だ。なんだか昔懐かしいような、そんな雰囲気と女の生き様が好きで読んでしまう。

 大学の時の後援会で本人を見たことがある。話し振りはとっても面白く、「あなたの本、ものによってですけど好きです!!」と言っちゃいたいくらいだった。どうも私が好むものはそんなに売れ行きもよくないらしく「みなさん買ってください」と冗談めかしていっていたけれど、エロかったりスキャンダラスじゃなきゃ林真理子の本は売れないのかなあと思ったものです。

 林真理子は私が現代での純文学を作品によっては体現できていると思う作家の1人であります。